AUDIOLOGY JAPAN
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原著
成人人工内耳長期装用例における装用閾値と後迷路機能
森 尚彫伊藤 壽一平海 晴一山口 忍柴田 尚美山本 典生坂本 達則岩井 詔子小島 憲松本 昌宏扇田 秀章
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2012 年 55 巻 3 号 p. 190-197

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抄録

成人人工内耳 (以下CI) 長期装用者45例のCI装用閾値の推移と, 術時年齢, 失聴期間, 失聴原因との関連を調査した。さらに, 閾値良好群・不良群の2群に分類し, CIのTCレベル, ダイナミックレンジおよび語音明瞭度・了解度の比較から, CI装用閾値に影響を与える要因について検討し, 以下の知見をえた。
1.術前因子では,失聴期間が1年以内と短い場合は,CI装用閾値が良好に得られる傾向にあった。
2.閾値不良群は,閾値良好群よりCレベルと子音正答率が有意に低かった。
3.閾値不良群では,Cレベルが低く,ダイナミックレンジの拡大が困難であるため,Tレベルの上昇も困難であった。そのため,装用閾値が高く,語音聴取能力が低いと考えられた。
4.閾値不良群が閾値を得られない要因として,後迷路の神経機能が低下している可能性が考えられた。
5.CI装用効果における装用閾値や語音聴取に影響を与える一因として,後迷路機能の問題があると考えられた。

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© 2012 日本聴覚医学会
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