肺癌
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症例報告
骨髄脂肪腫と診断された後縦隔腫瘍の1例
江花 弘基岡本 翔一臼井 亮伊藤 淳澁谷 泰寛石川 進
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2012 年 52 巻 4 号 p. 397-401

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抄録

背景.骨髄脂肪腫は主に副腎皮質に発生する良性腫瘍であり,後縦隔発生例は比較的稀である.症例.78歳,男性.他病精査時の胸部X線写真ならびに胸部CTで偶然右後縦隔腫瘍を指摘され,精査・加療目的に当科紹介となった.胸部CTでは第9/10胸椎レベルの右傍椎体域に40×26 mmの辺縁整,異常石灰化を認めない,造影効果の乏しい低吸収域の腫瘤を認めた.胸部MRIではT1およびT2強調像で軽度高信号を基調とし不均一な低信号を混じ,低信号の被膜を伴っていた.脂肪抑制T2強調像では脂肪を含有することが示唆された.診断と治療をかね胸腔鏡下に被膜ごと腫瘍を摘出した.病理では被膜様構造に覆われた成熟脂肪細胞の増生と脂肪細胞間に赤芽球系や骨髄球系細胞などの骨髄組織を伴う腫瘍であった.血液疾患の既往がないことから骨髄脂肪腫と診断した.結論.骨髄脂肪腫は比較的稀な疾患であるが脂肪を含む後縦隔腫瘍の鑑別診断の一つとして念頭に置くべきである.髄外造血巣との鑑別は病理像だけでは困難であり血液疾患の有無なども考慮し診断にあたるべきである.良性腫瘍であるため術前に診断が得られ,特に随伴症状がなければ経過観察も一つの選択肢と考える.

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© 2012 日本肺癌学会
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