2012 年 26 巻 7 号 p. 724-728
症例は55歳男性.2010年1月左下葉の肺炎の診断で入院し,1週間で軽快し,退院となった.退院後も浸潤影が残存したため同年4月精査目的に当院紹介され,気管支鏡検査を施行した.左B8aからPapanicolaou分類class Vの癌細胞を認めたため6月左下葉切除+リンパ節郭清を施行した.切除標本では同一肺葉内転移を認め,pT3N0M0 IIB細気管支肺胞上皮癌であった.本症例は,癌性閉塞性肺炎ではなく通常の肺炎として治療されたが,3ヵ月後に残存する浸潤影を契機に肺癌が発見された.肺炎の治療後に陰影が残存する場合には,腫瘍性疾患の可能性があり得ることも十分視野に入れて治療していく必要があると思われた.