日本気管食道科学会会報
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症例
喉頭の変形と嗄声症状を残した幼児喉頭カンジダ症の1例
西川 仁日高 浩史小林 俊光
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2012 年 63 巻 3 号 p. 269-275

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抄録

喉頭真菌症はまれであり,乳幼児での症例はさらに少ない。今回われわれは,治癒したものの喉頭の変形と嗄声症状を残した幼児喉頭カンジダ症の1例を経験したので報告する。
患者は4歳7カ月の女児で,既往歴に白血球接着不全症がある。主訴は嗄声,吸気時の喘鳴で,喉頭粘膜の浮腫性腫脹と散在性の白苔を認めた。培養検査等で診断がつかず,経過観察中,症状が悪化し,粘膜腫脹の増悪,肉芽腫形成,声帯腫脹による声門の狭小化を認め入院となった。入院時培養検査にてCandida albicansが同定され,抗真菌薬の全身投与と局所投与を行ったが,短期間では症状・所見は改善せず,陥没呼吸や努力性呼吸は遷延し,気管切開術も検討した。最終的に保存的治療にて治癒せしめ,気道狭窄症状は軽快し,第18病日に退院となった。しかし,退院2年6カ月後も粘膜の瘢痕性肥厚による喉頭の変形や,嗄声症状を残している。
喉頭カンジダ症は全身状態の良い患者には治癒できる疾患であるが,遷延化すると粘膜の腫脹や肉芽腫形成にて気道狭窄を起こす。その後治癒せしめても,瘢痕性肥厚による喉頭の変形や嗄声症状を残しうるため,早期診断の上治療を行うことが望ましい。

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