2012 年 45 巻 11 号 p. 1121-1128
緩徐に進行する腸閉塞を契機に発見した虫垂切除後の遺残虫垂原発複合型腺神経内分泌細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は53歳の男性で,17歳時に虫垂切除術を施行されている.嘔気・腹痛を主訴に他院を受診し,CT上,回盲部の壁肥厚を認め,それらによる小腸イレウスと診断された.上下部内視鏡検査では腫瘍性病変を認めず,生検でも悪性所見が得られなかったため経過観察となっていたが,半年後に再度症状が出現し,当院紹介となった.繰り返すイレウス症状に対し,腸閉塞解除目的に回盲部切除術を行ったところ,病理組織学的に虫垂断端を中心に漿膜下層へ浸潤する腺癌細胞と神経内分泌分化を示唆する細胞を認め,免疫染色検査でchromogranin A,CD56/NCAMいずれも陽性であり,遺残虫垂原発複合型腺神経内分泌細胞癌と診断した.Ki-67 index 23%より組織学的に悪性度が高いと考え,術後補助化学療法を施行した.