超音波医学
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症例報告
カラードプラ超音波検査により診断し得た子宮円索静脈瘤の2例
前岡 悦子山岸 宏江説田 政樹佐藤 幸恵岡田 好美小島 祐毅山田 雄一郎清水 由貴有吉 彩湯浅 典博
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2012 年 39 巻 4 号 p. 471-476

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抄録

子宮円索静脈瘤は鼠径部に鼠径ヘルニアに似た腫瘤を形成するため,しばしば鼠径ヘルニアと誤診されて手術をうけ術中に静脈瘤と診断される.今回,我々は鼠径部に腫瘤を形成した妊娠女性にカラードプラ超音波検査を行い,子宮円索静脈瘤と診断し得た2例を経験したので報告する.症例1は29歳,女性で,妊娠後から右鼠径部に膨隆と違和感を自覚し,妊娠30週に鼠径ヘルニアを疑われて当院外科を受診した.立位で右鼠径部に軟らかい腫瘤が出現し,臥位で消失した.超音波断層法では右鼠径部に境界明瞭な低エコーの卵形腫瘤を認め,ここから管状の低エコー領域が外側に伸び子宮まで連続していた.カラードプラ法では腫瘤内に血流を認め,腹圧をかけると血流が増加した.以上の所見から子宮円索静脈瘤と診断した.分娩2週後の超音波検査では静脈瘤は縮小していた.症例2は36歳,女性で,妊娠28週から立位で左鼠径部に疼痛を自覚し,当院外科を受診した.立位で鼠径部に軟らかい腫瘤と圧痛を認めた.超音波断層法では,左鼠径部に境界明瞭な低エコーの紡錘形腫瘤を認めた.カラードプラ法では腫瘤内部に血流を認め,腹圧をかけると血流は増加したため,子宮円索静脈瘤と診断した.妊娠中の子宮円索静脈瘤は分娩により自然に軽快することが多い.不必要な手術を避けるためにも子宮円索静脈瘤は正しく診断されるべきで,そのためにカラードプラ法による超音波検査は有用である.

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© 2012 一般社団法人 日本超音波医学会
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