2012 年 61 巻 2 号 p. 124-129
症例は86歳女性。急な上腹部痛にて受診し,腹部超音波およびCT検査で胆嚢の腫大と著明な壁肥厚を認め,胆嚢炎の診断で入院となった。胆嚢内に結石や腫瘍は認めなかった。保存的加療にて改善しないため,経皮経肝胆嚢ドレナージ術 (PTGBD) を施行したところ胆汁は血性であり,壊死性胆嚢炎が疑われ緊急胆嚢摘出術を施行した。開腹所見ではGrossⅡ型遊走胆嚢で,胆嚢頸部を軸として時計方向に360度捻転しており,腹腔内には胆汁の漏出を認めていた。捻転解除後に胆嚢摘出を行なったところ,術後経過は良好で第15病日に退院となった。レトロスペクティブにCTを確認すると,胆嚢頸部に渦巻き像が確認され,術前に胆嚢捻転症を疑うことは可能であった。原因を指摘できない胆嚢炎においては胆嚢捻転を疑い画像を詳細に検討する必要があると考えられた。またPTGBDに関しては胆汁性腹膜炎の危険があるため,本症が疑われた場合の適応については慎重に判断するべきである。