日本臨床外科学会雑誌
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症例
上腸間膜静脈血栓症を合併した急性虫垂炎の1例
藤本 大裕加藤 嘉一郎天谷 奨三井 毅山口 明夫
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2012 年 73 巻 6 号 p. 1435-1439

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抄録

症例は25歳,男性.2週間続く腹痛を主訴に受診した.受診時の腹部造影CTにて腫大した虫垂とその周囲の膿瘍形成および上腸間膜静脈血栓を認めた.急性虫垂炎および上腸間膜静脈血栓症と診断し,虫垂切除および膿瘍ドレナージ術を施行した.術後1日目より経静脈的にヘパリン持続投与を開始した.術後経過は良好でワーファリン内服による抗凝固療法を継続し退院.術後6カ月目の腹部造影CTでは血栓の消失を確認した.虫垂炎などの炎症性疾患に起因した上腸間膜静脈血栓症の場合,炎症の重症化に伴い血栓の悪化をきたし腸管壊死の可能性もあり,血栓の早期診断と積極的な炎症のコントロールが重要であると考えられる.本疾患は腸管壊死による手術となれば広範囲小腸切除となる可能性が高いが,自験例においては炎症のコントロールのために虫垂切除を行い,ヘパリンの全身投与を行ったことで上腸間膜静脈血栓症の増悪と腸管壊死には至らなかった.

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