2012 年 32 巻 5 号 p. 692-699
術中覚醒はまれだが,患者にも麻酔担当者にとってもつらい経験となる.術中覚醒例を紹介し,よく起こしがちな事例・防止策の共有を試みた.その原因には麻酔薬の投与不足,痛み刺激による鎮静作用の相対的不足,個人差の評価ミスのほか,不明確なものもある.脳波モニターはコストもかかり完璧な信頼度ではないが,筋弛緩状態のように呼吸・体動では麻酔不足を判断できないときには特に有用性が高い.装着していてもその限界を知って判断の遅れや間違いがないようにするなどの注意が必要である.一方,術中に覚醒したと気づいたときにはその場で説明することができれば,心的外傷後ストレス障害(PTSD)を減らせる可能性も考えられた.