背景 : 尿管に発生した小細胞癌を経験したので, 腎盂尿管カテーテル尿, および自然尿細胞診標本における細胞像とともに両者の細胞像の違いについて報告する.
症例 : 患者は 70 歳代, 女性. 右腰痛を主訴に他院で受診し, 尿路感染症が疑われた. 超音波検査, 逆行性腎盂造影にて右水腎が認められ尿路感染症が疑われた. 腎盂尿管カテーテルによる右腎盂尿細胞診が行われ, 悪性, 尿路上皮癌と診断され, 手術のため当院に紹介された. 手術前に自然尿細胞診が行われ, 悪性, 小細胞癌疑いと診断され, 右腎尿管摘出術が行われた. 組織学的検索では, 小範囲に尿路上皮内癌を伴った小細胞癌と診断された.
結論 : 腎盂尿管カテーテル尿と自然尿細胞診標本で細胞診断が異なっていたが, この原因は腫瘍細胞の核径の違いによるものと考えられた. 腎盂尿管カテーテル尿の標本では, 自然尿細胞診標本中の腫瘍細胞より平均して核径が大きく, 小細胞癌の診断が困難であった. 自然尿中の腫瘍細胞は, 変性のため核が縮小するものと推測された. 腎盂尿管カテーテル尿中にも小細胞癌に由来する細胞が出現する可能性があることを認識しておくことが必要と考えられた.