日本輸血細胞治療学会誌
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症例
重症複合免疫不全症2例における同種骨髄細胞移植後のキメリズム解析
道野 淳子中出 祥代佐竹 伊津子西野 主眞安村 敏芳村 直樹野村 恵子金兼 弘和
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2012 年 58 巻 5 号 p. 704-709

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抄録

重症複合免疫不全症(severe combined immunodeficiency:SCID)の根治療法として同種造血幹細胞移植は欠かせない.今回,当院で経験したSCIDの2例(X連鎖SCIDおよびアデノシンデアミナーゼ欠損症)について,前者は前処置なしで,後者は弱い前処置後にHLA適合同胞からのマイナーミスマッチ同種骨髄移植(bone marrow transplantation:BMT)を行い,BMT後の赤血球抗原検査および白血球のマイクロサテライト(MS)多型を用いたキメリズム検査を経時的に行った.2例ともBMT後の免疫機能が改善されたという点では,本来の目的を達成することができた.移植後の経時的変化を追ったところ,症例1(X連鎖SCID)は,2年半後の現在も赤血球はレシピエント型のままであり,白血球は,T細胞以外の他の細胞は混合キメラの状態であった.症例2(アデノシンデアミナーゼ欠損症)は,1年後の現在,赤血球,白血球はほぼドナー型となった.症例1については,今後も経過観察を行っていく必要がある.

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© 2012 日本輸血・細胞治療学会
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