日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
成人若年期の生活習慣とメタボリックシンドロームに係わるリスクの保有との関連 神戸市若年期健康診査のデータを用いて
曽我 洋二白井 千香伊地智 昭浩
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2013 年 60 巻 2 号 p. 98-106

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抄録

目的 生活習慣病は,保健指導等による適切な生活習慣改善により予防可能といわれており,またより早期での予防対策が重要である。若年者において普段の生活習慣とメタボリックシンドロームに係わるリスクの保有との関連を,神戸市若年期健康診査のデータを用い分析,検討を加えた。
方法 神戸市若年期健康診査を受診した4,912人,30~39歳のデータを用いた。生活習慣病にかかわるとされている内臓脂肪蓄積リスク,血圧リスク,血糖リスクおよび脂質リスクは「標準的な健診•保健指導プログラム;厚生労働省」に基づいて判定した。メタボリックシンドロームに係わるリスクとして内臓脂肪蓄積リスクを保有しかつ,血圧リスク,血糖リスク,脂質リスクのいずれか 1 つ以上保有するものを「メタボリックシンドローム予備群以上保有者(MSR)」それ以外を「非保有者(nMSR)」とした。検診で用いられる質問票のうち生活習慣に関連していると思われる11問を抽出し,これらの設問と MSR/nMSR との関連を調べた。また MSR 群における行動変容のステージと保健指導の希望の有無についても調べた。
結果 男性,女性ともに人と比較して食べる速度が「速い」と答えた群は「ふつう」もしくは「遅い」と答えた群に比べ MSR の割合が有意に高かった。また,女性においては喫煙習慣,朝食を抜くことが週に 3 回以上ある,就寝前の 2 時間以内に夕食をとることが週に 3 回以上あるに「はい」と答えた群は「いいえ」と答えた群に比べ MSR の割合が有意に高かった。ほかの生活習慣で調整しても,女性においては食べる速度,遅い夕食,朝食抜きはそれぞれ独立してオッズ比にして約 2 倍のメタボリックシンドローム予備群以上の保有に関連していた。MSR 群において,行動変容ステージモデルで,無関心期にあたるものは11.7%,保健指導を希望するものは54.8%存在した。
結論 30歳代においても食習慣の乱れとメタボリックシンドロームに係わるリスクの保有との関連が示唆されること,またこの年代においてリスクを保有しているものの生活習慣の改善に対する意識は決して低くないことから,30歳代の生活習慣の改善に取り組む事業の必要性は高いと考えられる。特定健診の目的が,将来的な生活習慣病の発症の予防であるのであれば,30歳代へもターゲットを広げる,この年代へ重点的にアプローチするなど,そのあり方を考える必要が在る。

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© 2013 日本公衆衛生学会
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