日本公衆衛生雑誌
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居宅介護支援専門員によって同一日に訪問サービスを頻回に必要と判断される要介護者の発現率と対象像の明確化
成瀬 昂田口 敦子永田 智子桑原 雄樹村嶋 幸代
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2013 年 60 巻 6 号 p. 370-376

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抄録

目的 2012年から定期巡回•随時対応型訪問介護•看護サービスが介護保険サービスとして開始されたが,その具体的な対象像は明らかになっていない。本研究では,このサービスの必要者に近い者の像として,「一日のうちに介護もしくは看護職員による頻回な訪問(一日に 3 回以上)を必要とする要介護者」の発現率とその対象像を明らかにする。
方法 2011年 7 月に滋賀県 K 市内および近隣に開設されている73か所の居宅介護支援事業所に調査協力を依頼し,そこに勤務する居宅介護支援専門員全員を対象に調査協力を依頼した。居宅介護支援専門員が担当する事例のうち,K 市内に居住し,要介護 1 以上の全事例を対象に,基本属性と,訪問介護•看護サービスの充足状況,頻回な訪問の必要性に対する居宅介護支援専門員の判断について,無記名自記式質問紙を用いて調査した。そして,Chi-squared Automatic Interaction Detection を用いて,頻回な訪問が必要な者の対象像を記述した。
結果 1,448事例について回答を得た。そのうち居宅介護支援専門員によって頻回な訪問が必要と判断されたのは110人(7.8%)で,うち61人(全体の4.2%)は訪問介護もしくは看護が不足していた。頻回な訪問の必要性の有無を従属変数とする Chi-squared Automatic Interaction Detection の結果,頻回な訪問の必要性が最も高い対象像は「要介護 4 以上で,介護可能な同居家族が 1 人以下の者」で,該当者の30.8%に頻回な訪問が必要であった。次いで必要性が高かったのは,「要介護 1∼3 で,なおかつ処方された薬を指示通りに服用していない者」で,該当者の18.1%が頻回な訪問を必要としていた。
結論 訪問サービスを一日のうちに頻回に必要とし,かつ訪問介護もしくは看護に不足がある者が要介護者の4.2%いた。定期巡回•随時対応型訪問介護•看護サービスは彼らの unmet needs 解消の一助となる可能性があり,積極的サービス整備の必要性が確認された。また,訪問サービスを一日のうちに頻回に必要とする可能性の高い対象像として,要介護 3 以下の者が含まれていた。定期巡回•随時対応型訪問介護•看護サービスは主に重症者を想定した報告が多いが,地域で実際にサービス整備を進める上では,軽症者の必要性も考慮する必要がある。

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© 2013 日本公衆衛生学会
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