日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
地域在住高齢者による自主グループ設立過程と関連要因
福嶋 篤河合 恒光武 誠吾大渕 修一塩田 琴美岡 浩一朗
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2014 年 61 巻 1 号 p. 30-40

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抄録

目的 介護予防リーダー養成講座(以下,講座)の受講を経て,介護予防活動を実践する自主グループを設立した高齢者を対象にインタビュー調査を行った。本研究では,調査結果を質的に分析し,自主グループ設立に至るまでの対象者の過程およびそれらに関連する要因について明らかにすることを目的とした。
方法 対象者は東京都 A 市在住の高齢者で,講座を受講した者10人とした。対象者の年齢は62–76歳であった。対象者に自主グループの設立に至る過程について40~90分の半構造化された個別インタビューを行い,回答を質的分析方法である修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。自主グループの設立に関連があると考えられる概念を抽出し,概念をまとめるカテゴリを生成して,それらの関係性を比較検討しながら結果図にまとめた。
結果 対象者は,自主グループ設立に至るまでに「地域コミュニティへの参加を後押しする気持ち」,「地域コミュニティ参加の契機」,「地域コミュニティにおける課題の認識」,「介護予防の重要性の認識」,「活動意欲の向上」,「自主グループ設立準備での課題の認識」といった気持ちや認識の変化の過程を経ていた。その過程には「過去の経験」,「地域コミュニティでの経験」,「講座での経験」などの経験が関連要因として気持ちや認識の変化へ影響していた。同様に,「地域コミュニティでの支援」,「講座受講での支援」,「自主グループ設立での支援」などの支援や「設立活動を促進・阻害する感情」が関連要因として自主グループ設立に至る気持ちや認識の変化に必要であった。この一連のプロセスは「地域コミュニティ参加に至らせる気持ち・経験がある」,「地域コミュニティ・講座を通して課題の認識が深まる」,「設立準備を通して活動意欲・ノウハウが向上する」の 3 つの中心的概念からなっていた。
結論 本研究の結果から,高齢者が自主グループの設立に至るまでには,段階的な気持ちや認識の変化やその変化に関連する要因があることが示された。この一連のプロセスは「地域コミュニティへの参加」,「地域課題の認識」,「活動意欲・ノウハウの向上」の 3 つの段階から構成されており,各段階の移行へ関連する要因を考慮して,高齢者の地域コミュニティへの参加促進,講座開催,自主グループ設立準備支援を進めることで,効果的な高齢者の自主グループ設立支援を行うことができると考える。

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© 2014 日本公衆衛生学会
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