2012 年 27 巻 5 号 p. 323-328
著者らは,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の伝播を解明する遺伝子解析を基準とし,感受性データをSPSSTMによってクラスター解析(S法)し,73%の正診率を報告した.今回S法との比較において,無償ソフトを載せたExcelTMにて行う多剤感受性データのクラスター解析(E法)の妥当性を検討した.
対象としたMRSAは同一人の第1検出株とし,株数/薬剤数は(1)上記報告での71株/11剤,(2) 2011年に分離された70株/15剤,(3) 2005年に水平感染が疑われた時の3職員由来6株を含む70株/13剤で,これらをクラスター解析した.
その結果,(1) E法は論文のS法と同一の分類能だった.(2) S法を基準とし,E法の感度,特異度及び効率は,97.6%, 92.9%及び95.7%であった.(3) S法で3職員の株は患者株とは分類が異なり,職員の株が原因ではなく,水平感染が原因と推測された.そこで手から手の伝播防止策を強化し,アウトブレイクが阻止された.E法は,S法と同一の分類能だった.S法とE法とも検体提出から約3日後に解析できた.
よってE法によるタイピングは,MRSA伝播解析とそれに基づく迅速な対応に有用と思われる.