2012 年 34 巻 5 号 p. 356-362
症例は胃食道逆流症(GERD)の既往がある75歳,男性.右中大脳動脈領域の脳梗塞発症後より吃逆が出現した.経鼻胃管による経腸栄養を開始したが,吃逆に伴い胃内容の逆流を来し嚥下性肺炎を繰り返した.吃逆は治療抵抗性で,逆流症状と並行して増悪した.薬物治療に加え,液体流動食を半固形化することで逆流のみならず吃逆も軽減し,肺炎の再発もなくなった.脳卒中後の嚥下障害に対し経鼻胃管による経腸栄養が推奨されているが,吃逆を呈する患者では胃管による機械的刺激も増悪因子となりうるため,漫然とした長期使用により医原性に難治化させないよう注意すべきである.吃逆はGERDの一症状であり,逆流症状の自覚に乏しい高齢患者においても,難治性吃逆を呈する患者ではGERDの関与を疑うことが重要であるとともに,逆流の防止が吃逆の軽減につながる可能性があり,経腸栄養使用時は半固形化栄養法を導入することが有効と考えられた.