脳卒中
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症例報告
回復期に塞栓源を特定しえた左房粘液腫による心原性脳塞栓症の1例
萩原 のり子古賀 秀剛片山 雄二井林 雪郎
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2012 年 34 巻 5 号 p. 363-368

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抄録

症例は69歳,男性.突然の右片麻痺と失語症を来し,頭部MRIで多発する急性期脳梗塞を認めた.心原性脳塞栓症を疑い塞栓源の検索が進められたが,急性期の初回検査では明らかな異常は指摘されなかった.発作性心房細動の可能性を考慮し抗凝固療法が開始され,第38病日に当院へ転入院した.塞栓源の再評価を行った結果,第40病日の経胸壁心エコー検査で左房内に可動性の腫瘤を認めた.適切な抗凝固療法下で増大した腫瘤であり,粘液腫が疑われたため外科的治療の目的で緊急転院した.第55病日に腫瘤が切除され,病理学的に粘液腫と診断された.心臓粘液腫は稀な疾患であるが,腫瘍片や表面の血栓が剥離して塞栓症を引き起こすため,多発性脳塞栓症を診る場合は常に考慮すべき疾患の一つである.発症直後の単回評価では残存腫瘍が小さく検出されない場合があり,慢性期においても評価を継続することが適切な診断および治療につながると考えられる.

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© 2012 日本脳卒中学会
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