2013 年 35 巻 1 号 p. 12-19
要旨:解離性椎骨動脈瘤の破裂による外転神経麻痺の特徴を明らかにするため,当科で経験した症例の検討を行った.対象は過去10年間の当科における破裂解離性椎骨動脈瘤26例中外転神経麻痺を確認した7例で,年齢は43~75歳(平均57歳)で,男性3例,女性4例であった.この7例の臨床経過を後方視的に検討した.入院時Hunt & Kosnik gradeはIIが2例,Vが5例であった.7例中6例で橋前槽に厚い血腫を認め,2例において急性水頭症を伴っていた.外転神経麻痺の予後は5例で完全回復,2例で不全麻痺が残存した.解離性椎骨動脈瘤の破裂による外転神経麻痺の出現頻度は26.9%であった.外転神経麻痺の原因は,血腫による直接圧迫や破裂時の直接損傷によると考えられたが,急性水頭症が明らかな症例では,false localizing signの可能性もあり,出血源の予測には注意が必要であると考えられた.