ウイルス
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総説
生理的に機能するレトロウイルス複製制限因子APOBEC3の分子進化
宮澤 正顯
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2012 年 62 巻 1 号 p. 27-38

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抄録

 APOBEC3は一本鎖DNAを標的とするシチジンデアミナーゼであり,レトロウイルス複製制限因子として機能する.現存の感染性レトロウイルスは自然宿主のAPOBEC3に対抗する機能を獲得しており,一方で宿主側も遺伝子重複によりAPOBEC3機能を進化させてきたと信じられていた.ところが最近,ヒトでもマウスでもAPOBEC3分子がタンパク質レベルで低発現となるような遺伝子多型が種の分岐後に獲得され,これが地理的に広範囲に分布している事実が明らかとなった.外来性の感染性レトロウイルスに対してAPOBEC3が示す生理的な防御効果と,感染性レトロウイルスの脅威が少ない場合に同じシチジンデアミナーゼが示す可能性のあるゲノムDNAの傷害作用との間に,微妙なバランスが存在するらしい.本稿ではAPOBEC3の生理機能と分子進化について最近の知見を解説した.

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© 2012 日本ウイルス学会
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