2013 年 35 巻 Special_Issue 号 p. 53-58
我が国では,労働者数規模300人未満の事業所で80%以上の労働者が働いており,中小企業の安全衛生活動の活性化は大きな課題である.しかしながら,労働者数規模が小さくなるにつれて,投資上の制約などの経済的な面や人的資源が充分でなく,安全衛生管理体制,安全衛生活動の問題が生じている.これまで,中小企業向けの産業保健サービスは,地域産業保健センターや都道府県産業保健推進センター,中央労働災害防止協会などの公的団体や,健康診断実施サービス等を提供する労働衛生機関,健康保険組合や地域医療との連携で提供されてきた.欧州では企業外産業保健サービス機関が発達しており,産業保健サービスのカバー率がほぼ100%の国も存在するが,我が国においてはまだ低いといえる.事業者に安全衛生活動の有益性を示し,産業保健サービスの活用意欲を高める方策を検討するともに,サービス提供体制の整備や,産業医等の専門家の資質向上と人材を確保するための方策が必要である.