保存処理木材の寿命を明快に提示することを目標に, 1998年に多摩森林科学園へ設置された15種類のK4処理スギ丸棒について劣化調査や薬剤分析を行い, その結果から寿命を推定する試みを行った。昨年までの劣化調査データを解析した結果, 12年経過後も被害度は全て2.5未満で, 耐用年数は12年以上と判定された。現地から7種類の処理丸棒を回収し, 地上, 地際, 地中の各部位で薬剤の浸潤度と吸収量を分析した。分析結果をJAS の保存処理材の品質基準に照らすと, 浸潤度は全ての部位でK4に相当し, 吸収量は地際部でK2~K4, 地上部と地中部でK3~K4に相当しており, K4処理丸棒は13年経過後も保存処理材としての品質を保持していることが確認された。分析で得られた吸収量値と既存の野外杭試験データを関連付けて各丸棒の余命を予測し, 劣化調査で実証された耐用年数に加算することにより, 寿命の推定を試みた。その結果, K4スギ丸棒の寿命は概ね17~18年, 長いもので30年以上と推定された。