2012 年 58 巻 5 号 p. 289-294
木質構造で発生する床衝撃音は種々の周波数成分を含む騒音となることがある。そのような場合,「音の大きさ」を指標とするだけでは床衝撃音の「うるささ」を評価することは難しい。本研究では,木質構造の床衝撃音の「うるささ」を評価する新たな指標を見出すことを目的とした。フローリング,衝撃緩衝材,遮音材および厚物合板で構成される木造モデル床を木造軸組構造の上に構築し,各種の衝撃源によって発生させた床衝撃音を収録した。これらの収録音について,「音の大きさ」,「音の鋭さ」および「うるささ」に関わる主観評価を行うとともに,心理音響評価を行った。その結果,床衝撃音の「音の大きさ」,「音の鋭さ」および「うるささ」に関わる主観評価の間には,互いに高い相関があることがわかった。また,床衝撃音の「うるささ」は,心理音響指標の「非定常ラウドネス」と「シャープネス」の線形結合でモデル化できることが明らかとなった。