2010 年 42 巻 1 号 p. 19-33
オオニワシドリのオスはあずまやと呼ばれる構造物を造り,その周りにさまざまな飾り物を集め,求愛ディスプレイを行う。我々は,オーストラリア北部準州ダーウィン北部の熱帯サバンナにおいて,ニワシドリのあずまや構造と飾り物の量がオスの交尾成功に影響を及ぼすかどうかを検証した。2005,2006年に,それぞれ,16カ所と14カ所のあずまやにおいて,あずまや構造と飾り物の占める面積,および,あずまやオーナーの交尾成功を調べ,一般化線形混合モデルを適用し,分析した。あずまや構造としてはアベニューの長さと幅,あずまやの壁の厚さ(両側の平均値),あずまやの高さ,壁の非対称性(=壁の厚さの差の絶対値/両方の壁の平均)の5変数,飾り物としては緑の飾り物の占める面積と飾り物全体の占める面積の2変数を説明変数として計算した。総当たりのモデル選択の結果,全7変数のうちアベニューの長さと壁の厚さが交尾成功に対して正の影響因子として重要で,アベニューの幅が負の影響因子として重要であることがわかったが,飾り物の2変数は影響因子としての重要度は低かった。アベニューの長さと壁の厚さはあずまやの大きさと関係し,オスの激しいディスプレイからメスを物理的,心理的に防御し,メスがより長くあずまやに滞在することを促すと示唆された。長くて狭いアベニューはオスの任意のアベニューへの侵入を妨げ,交尾マウントの過程をメスが支配し,オスからのハラスメントを防ぐことを可能としていると考えられた。緑の飾り物はあずまやの入り口付近に置かれ,オスはディスプレイの際にこれらの飾り物を加えてメスに示すような行動を取ることから,ディスプレイの時に必要ではあるが,量は交尾成功には影響しないと考えられた。