2012 年 62 巻 4 号 p. 415-418
59歳男性. 4日前からの腹痛で近医を受診した. 臍部左側に圧痛と腫瘤を認め, 腹直筋膿瘍を疑い, 同日当院に紹介された. 前医CTでは左腹直筋直下に8 × 5 cm大の多房性嚢胞性腫瘤を認め, その内部に高輝度の線状影を認めた. 膿瘍腔と腸管壁に連続性なかったが, 形態からは魚骨穿通による膿瘍と考え, 緊急開腹手術を行った. 開腹時, 左腹直筋後鞘と腹膜は膿瘍のため損傷し, 腹腔内と交通し膿瘍腔を形成していた. この膿瘍腔内から約4 cmの魚骨を認めた. 更に腹腔内で膿瘍を被覆し一塊となった大網が腹膜に癒着していた. 小腸及び観察可能範囲の結腸を検索したが穿孔部を認めなかった. 術後本人から発症数日前に焼鮭を食べたことを聴取した. 術後経過は全身状態良好であったが, 創感染を合併したため術後21日で退院した.