2012 年 74 巻 4 号 p. 405-408
6歳,女児。繰り返す有痛性の紅斑と発熱,腹部症状を主訴に当院小児科に入院し,皮膚病変の評価のため当科を受診した。下腿伸側の圧痛を伴う紅斑から生検を行ったところ,septal panniculitis の像で,結節性紅斑と診断した。発熱,四肢末端の落屑,紅斑,苺舌,頚部リンパ節腫脹など川崎病の診断基準を満たしたため,γ-グロブリン,アスピリン投与などの川崎病としての治療を開始した。治療開始翌日より解熱し皮疹も消退傾向となった。心エコーでも冠動脈の拡張傾向がないことを確認し,第35病日に退院した。川崎病の診断基準を満たした一方で,腹部症状や結節性紅斑,井戸水の使用歴もあり,川崎病の症状を伴ったエルシニア感染症の可能性も考えられた。2回の便培養は陰性であったが,エルシニア血清抗体価の上昇 (Yersinia pseudotuberculosis 血清群4b群,1280倍) を認め,結節性紅斑と川崎病様症状を伴ったエルシニア感染症と考えた。