静脈学
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原著
上腕静脈転位表在化内シャントの検討
松本 春信山本 瑛介神谷 千明三浦 恵美北岡 斎鈴木 潤出口 順夫佐藤 紀
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 23 巻 2 号 p. 59-64

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抄録

前腕・肘窩でバスキュラーアクセス作成困難な場合,人工血管が選択されることが多いが,開存率や感染の問題から,最近では上腕尺側皮静脈表在化内シャントの使用も増加している.しかし,深部静脈である上腕静脈表在化内シャント(brachial vein transposition arteriovenous fistula; BrVT)の報告は少ない.今回,当科で作成したBrVTについて報告する.2008年以降,当科で作成したBrVTは5例(平均年齢73歳)で,すべて1期的に作成した.平均手術時間は168分で,初回穿刺までの期間は平均22日であった.合併症としては,全例に上肢浮腫を認めた.4例は一過性であったが,残り1例は初回穿刺時に血腫を形成後,創がし開し浮腫が遷延した.感染やスチール症候群は認めなかった.観察期間中2例にシャント静脈狭窄に対する血管内治療を必要としたが,1年2次開存率は100%であった.BrVTの報告は少なく,その有用性にはまだ議論があるものの,アクセス作成困難例に対して検討すべき術式のひとつと考える.

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