2003 年 16 巻 2 号 p. 170-182
熱収支法を用いて地表面の熱フラックスを推定するに当たって地表面温度は鍵になる物理量である. そこで, 大気の窓領域 (8∼14μm) における熱赤外域のリモートセンシングデータ (放射温度) を用いてフラックス推定を行おうとする試みが多く行われてきた. 本論文では特に, 植生に覆われた地表面において, 放射温度と顕熱·潜熱フラックスを結びつけようとして生じた問題と, その解決法として提案されているいくつかの方法を中心に解説する. また, 特に衛星リモートセンシングで問題になる大気補正, および射出率の問題, そして, 今後多くの展開が予想されるリモートセンシングと数値モデルとの結合についても概要を述べる.