ウイルス
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総説
ヒト・メタニューモウイルス
菊田 英明
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2006 年 56 巻 2 号 p. 173-181

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抄録

 ヒト・メタニューモウイルス(human metapneumovirus: hMPV)は,2001年に発見されたウイルスで,パラミクソウイルス科,ニューモウイルス亜科,メタニューモウイルス属に分類された.hMPVの遺伝子は,8個の遺伝子を持ち,N-P-M-F-M2-SH-G-Lの遺伝子配列を示す.hMPVのアミノ酸配列は,トリに感染するトリ・ニューモウイルスに最も類似している.ヒトのウイルスの中で遺伝子が一番類似しているウイルスは,臨床症状も似ているRSウイルスである.hMPVは,2つのグループ,さらにそれぞれ2つのサブグループに分れる.ウイルス表面には,F, G, SH蛋白が存在する.血清中に存在するhMPVに対する主な抗体は,F蛋白に対する抗体で,中和活性を持ち,2つのグループ間に交差反応性がある.ウイルス性の呼吸器感染症の中で小児では5~10%,成人では2~4%は,hMPVが原因と推測されている.乳幼児で喘鳴をきたす急性呼吸器感染症の原因ウイルスであることが多く,乳幼児,高齢者,免疫不全状態の患者では重症化の危険がある.本邦における流行のピークは,春である.再感染を防ぐための十分な終生免疫が一回の感染では得られず,幼小児期においても何度も再感染を受け症状を呈する.診断は,現在RT-PCRによるhMPV RNAの検出が最も感度が高い検査法である.

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© 2006 日本ウイルス学会
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