ウイルス
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特集2:C型肝炎ウイルスによる発癌機構とその治療
C型肝炎ウイルスの感染粒子形成機構
鈴木 哲朗政木 隆博相崎 英樹
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2008 年 58 巻 2 号 p. 199-206

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抄録

 効率のよいウイルス産生細胞系が確立されていなかったため,C型肝炎ウイルス(HCV)の生活環研究の中で感染粒子の形成機構に関する解析は最も遅れていた.JFH-1株の出現により,感染から分泌までウイルス生活環全体に亘る解析が可能となり,粒子形成の分子機構研究が大きな展開を見せている.細胞内の脂肪滴及びその周辺の膜構造が粒子形成の場として働くことが示された.我々は,ゲノム複製調節に関与することが知られていたHCV非構造蛋白NS5Aが粒子形成にも関与することを示し,粒子形成の初期過程において,新たに作られたウイルスRNAがNS5A蛋白によって捕捉され,更にこのNS5A-HCV RNA複合体がCore蛋白と会合することがRNAパッケージングの引き金になるというモデルを提唱した.また,感染性粒子表面のコレステロール,スフィンゴ脂質が粒子構造の維持,感染性に重要であることを示す知見を得た.ウイルス非構造蛋白,脂質,脂質結合因子がHCV粒子のアセンブリー,輸送などにどのように関与しているかを明らかにすることが粒子形成機構研究の鍵になるものと思われる.

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© 2008 日本ウイルス学会
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