ウイルス
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平成20年杉浦賞論文
ポリオウイルスの体内伝播機構解析
大岡 静衣
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2009 年 59 巻 1 号 p. 107-114

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抄録

 ポリオウイルス(PV)は急性灰白髄炎(小児まひ)の病因ウイルスである.ヒトにおいて経口→消化管→ウイルス血症→血液脳関門→中枢神経系(CNS)と伝播し,運動神経細胞を脱落させ四肢に麻痺を生じさせる経路と,PVが運動神経を介して骨格筋から直接CNSへ侵入する神経経路が存在する.目的組織でPVが効率よく複製するためには,(1)目的組織に到達,(2)細胞に侵入,(3)細胞内の複製場所に到達,(4)そこで効率よく複製,の段階が重要である.我々は,胃の低pHによりPVが失活すること,および1型インターフェロン自然免疫系がPV経口感染防御に寄与することを明らかにし,マウスを用いたPV経口感染系を確立した.また,PVの神経経路を解析し,ヒトPV受容体(hPVR/CD155)依存的PV逆行性輸送系では,PVが完全な感染性粒子のまま運動神経シナプスからhPVRによってエンドサイトーシスされ,細胞質ダイニンにより逆行性軸索輸送されることを証明した.さらに,hPVR非依存的なPV逆行性輸送系の存在も示した.

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© 2009 日本ウイルス学会
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