ウイルス
Online ISSN : 1884-3433
Print ISSN : 0042-6857
ISSN-L : 0042-6857
特集 第57回日本ウイルス学会シンポジウム特集
E型肝炎ウイルスの感染培養系
岡本 宏明
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 60 巻 1 号 p. 93-104

詳細
抄録

 これまでに,E型肝炎ウイルス(HEV)の初代肝細胞や種々の株化細胞での培養が試みられてきたが,いずれも増殖レベルは極めて低かった.最近,著者らは高力価のHEV(JE03-1760F株[遺伝子型3型],あるいはHE-JF5/15F株[4型])を含む糞便浮遊液を用い,肝癌細胞株PLC/ PRF/5と肺癌細胞株A549での効率的なHEVの培養系を確立することに成功した.培養上清中のHEV RNA量は108 copies/mlに達し,新たな細胞への継代培養も可能であった.野生株JE03-1760Fと同等の増殖能を持つ感染性cDNAクローンを作製することができ,ORF3欠損変異クローンを用いて解析した結果,ORF3蛋白は感染細胞からのHEV粒子の放出に重要な役割を果たしていることが明らかになった.さらに,E型肝炎患者に由来する急性期血清中のHEVも,ウイルス量が多いほど,効率よくPLC/PRF/5細胞やA549細胞に感染し増殖しうることが分かった.効率的なHEVの感染培養系が確立されたことで,これまで未解明であったHEVに関する多方面の数々の疑問に一つ一つ答えを出すことが可能になったと言える.

著者関連情報
© 2010 日本ウイルス学会
前の記事 次の記事
feedback
Top