ウイルス
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総説
ゲノミクス,計算科学,実験科学の手法に基づくHIVの中和抗体逃避機構の研究
横山 勝
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2011 年 61 巻 1 号 p. 49-58

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抄録

 HIV-1 gp120のV3は,感染受容体との相互作用に中心的役割を担う.そのため本来は,機能的制約が強く作用し,アミノ酸変異は抑制されるはずである.ところがV3は高変異領域として知られる.これは,V3は免疫原性が高く,持続感染には抗原変異を必要とするため,とされる.これまで,我々はV3電荷量が中和感受性に影響することを示してきた.gp120が中和を逃避するメカニズムとして,抗原変異,立体配置による遮蔽,糖鎖による遮蔽,立体構造変化による遮蔽などが提案されている.中和を逃避する分子メカニズムが理解できれば,中和能を制御できる可能性がある.本総説では,計算科学によるHIVの中和抗体逃避機構の研究を紹介する.計算科学は,ゲノム情報に基づく多様性解析や実験科学の手法等と組み合わせることで,より有益な情報を得ることができる.

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© 2011 日本ウイルス学会
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