ウイルス
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特集 HIV研究の新しい展開~第58回日本ウイルス学会シンポジウムから~
宿主防御因子APOBEC3ファミリーと抗レトロウイルス機序
岩谷 靖雅
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2011 年 61 巻 1 号 p. 67-72

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抄録

 宿主防御因子APOBEC3 ファミリーは,細胞内に発現するシチジンデアミナーゼである.ヒトでは,7種(A,B,C,DE,F,G,H)コードされ,血球系を中心とした細胞で恒常的に発現されている.APOBEC3 は各々異なった抗ウイルス作用スペクトルを呈するが,レトロトランスポゾンやレトロウイルスなどのレトロエレメントだけでなく B型肝炎ウイルスやパルボウイルスなどの複製を阻害することが知られている.A3Gの場合には,Vifを欠損したHIV (vif (-) HIV)の複製を強力に阻害する.vif (-) HIVは,ウイルス産生細胞内で発現するA3Gを粒子内に取込む.そのため,新たな細胞に感染する時に,逆転写の過程がA3Gによって強く阻害される.一方,野生型のHIV(WT HIV)は,ウイルス産生細胞内でVifを発現し,ユビキチン・プロテアソーム系を介して選択的にA3Gを破壊し枯渇させてしまう.このため,WT HIVはA3Gをウイルス粒子に取込まず,A3Gの防御システムから逃れることができる.タンパクとしての生化学的特性を基に,A3Gの分子メカニズムを中心に,抗レトロウイルス作用機序を考察する.

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© 2011 日本ウイルス学会
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