水産増殖
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マダイ卵および仔稚魚の生残に及ぼすアンモニアの影響
城戸 勝利渡辺 康憲中村 幸雄岡村 武志
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1991 年 39 巻 4 号 p. 353-362

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抄録

マダイの卵期および仔稚魚期の生残に及ぼすアンモニアの影響について検討した。
(1) 水温20℃, 塩分34.26~34.46‰, pH8.03~8.12, 溶存酸素量5.36~5.37ml/l (飽和度100%) の対照区毎水の水質条件下におけるマダイ卵の孵化時の正常生残に及ぼすアンモニア (NH4-N) の半数孵化濃度 (HC50値) として6.6~7.0ppmが得られた。試験海水のpHは8.03~9.35とアンモニア濃度の増大とともに増大した。非解離アンモニア (NH3-N) としてのHC50は0.79~0.88ppm-Nと見積もられた。
(2) 水温21℃, 塩分33.81~34.39‰, pH8.11~8.19, 溶存酸素量5.17~5.29ml/l (飽和度97~100%) の対照区海水の条件下で, サイズの異なる3群のマダイ仔稚魚 (平均体長7.8, 8.7, 12.4mm; 平均体重7.5, 15.9, 52.7mg) の正常生残に及ぼすアンモニア (NH4-N) の21~168時間半数致死濃度 (LC50値) を求めた。15.9mgおよび52.7mgサイズの仔稚魚の96時間LC50として3.0, 4.9ppmが得られ, 大きなサイズの仔稚魚のLC50値が高かった。非解離アンモニア (NH3-N) としての96時間LC50は, サイズの増大につれて0.26ppm-N, 0.58ppm-Nと見積もられた。試験海水のpHは, 8.11~8.97 (開始時) から, 96時間後に0.19~0.58低下 (供試魚生残区) した。
(3) 平均体重7.5mgの仔稚魚の接触時間毎のアンモニア (NH4-N) のLC50値は, 接触時間21~68時間の範囲で接触時間とともに減少し, 21時間で5.0ppm, 44時間で2.9ppm, 68時間で2.6ppmであった。一方, 平均体重15.9, 52.7mgの仔稚魚については, このような傾向は認められず, 前者では25~96時間, 後者では26~168時間LC50値はほぼ一定であった。

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