日本畜産学会報
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飼料の放射線処理
I. In vitroにおける消化率,トリプシンインヒビターの活性および有効性リジンにおよぼす電子線の影響とケナガコナダニの殺虫線量について
梅田 圭司高野 博幸佐藤 友太郎戸塚 耕二高橋 芳雄麻生 和衛
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1971 年 42 巻 12 号 p. 617-623

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抄録

数種の配合飼料原料を電子線で高線量処理し,一般成分への影響,酵素による消化率の変化などを調べ,生大豆粉のトリプシンインヒビター,生大豆粉および乾燥トルラ酵母の有効性リジンにおよぼす影響,ケナガコナダニの放射線抵抗についても調べた.
1. 電子線で,6,10,20 Mradの高線量を照射したカンショでん粉粕,コーンコブミールをジアスターゼで,生大豆粉,乾燥トルラ酵母をペプシンで人工消化させた.でん粉粕,コーンコブミールともに線量を増すと,粗でん粉含量は少なくなるが,残った粗でん粉の人工消化率は,でん粉粕では線量とともに高くなり,コーンコブミールでは逆に低下した.生大豆粉のペプシンによる人工消化率は,照射によって変化しないが,酵母の場合は線量の増加とともに高くなった.
2. 生大豆粉のトリプシンインヒビターの活性は,10 Mradの照射で18%,20 Mradの照射で58%低下し,等量の水を加えるとさらに活性低下は著しかった.しかし4~5 Mradの殺菌線量での活性低下は数%と推測され,ほとんど影響は考えられない.
生大豆粉中の有効性リジン含量は,線量の増加に従って若干減少し,20 Mradでは減少率18%になった.しかし,乾燥トルラ酵母では同線量でほとんど変化しなかった.
3. 数種の配合飼料原料および配合飼料に,ケナガコナダニを混入して10~160 Kradの電子線を照射して殺虫線量を求めた結果,ダニの不妊化を考慮するならば,50 Kradで十分と思われた.

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