日本畜産学会報
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半精製飼料に対する放射線照射
過酸化物の生成および雛に対する影響
滝川 明宏檀原 宏大山 嘉信
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1976 年 47 巻 5 号 p. 292-302

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抄録

放射線照射による飼料成分および飼料価値の変化を調べるため,大豆油10%を含む半精製飼料に対し,0.6,3および6M radのγ線を照射した後,飼料成分の変化を調べるとともに,雛に給与して,その影響を検討した.その結果,0.6M radでは過酸化物の生成は比較的少なかったが,3M rad以上の照射により多量の過酸化物が生成され,粗脂肪含量が減少した.過酸化物は,照射総線量が同一でも照射時間が長いほど生成量が多かった.雛に対する影響は0.6M radではほとんど認められなかったが,3M rad以上では,飼料摂取量および飼料効率がいずれも有意に減少し,飼料の代謝エネルギー含量および消化率も有意に低下した.特に6M radの照射により粗脂肪の消化率の低下が顕著であった.また,高線量を照射した場合に腸管,肝臓などが有意に肥大し,腸壁の肥厚が顕著であった.雛の溶血性は0.6および3M radの照射により高まった.6M radでは,試験開始後2週までほとんど変化なかったが,これは過酸化物等の吸収量が少なかったためと考えられる.飼料摂取量の減少,飼料効率および消化率の低下,臓器の肥大,溶血性の上昇などは自動酸化によって調製した高度酸化油を給与した場合にも認められ,一方,油以外の成分に6M radを照射した区では発育の低下が認められなかった.したがって,これらの現象は,γ線照射により生成された過酸化物等によって惹起されたものと考えられる.

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