1975 年 22 巻 1 号 p. 24-29
米デンプンをγ線照射すると低い水分領域(1~8%,dry basis)では1万radの低線量でESRにより検出され,ラジカルのシグナルはほぼシングレットのパターンを示した。一方高い水分領域(15~30%)では30万radの高い線量でようやく検出され,かつそのシグナルは複雑なパターンを示した。
ラジカル生成量は水分量の増加に伴い減少するが,水分量1~8%では15~30%に比べて著しくラジカル量が多かった。従ってデンプンの放射線分解におけるラジカル生成に対して水分は保護作用としての役割をすると考えられ,このことは同時に測定した極限粘度,平均重合度,ヨウ素親和力及びカルボキシル基量などの物理化学的変化においても同様な傾向がみられた。
ラジカルの安定性については水分含量1~5%までは24時間でも比較的安定に存在したが,さらに水分量の増加と共に減少速度が速くなり,11%以上になると開封直後で急激なるラジカル量の減少がみられた。