2012 年 13 巻 p. 44-50
フラグメント分子軌道(fragment molecular orbital; FMO)法は、近年巨大分子系の電子状態計算手法として、注目を集めている。系が大きくなるとFMO法では、ダイマー計算の計算時間の割合が大きくなってくる(O(N3))。この問題を解決するためにdimer-es近似が開発された。Dimer-es近似は離れたモノマー間のダイマーSCF計算を、静電相互作用するフラグメントで近似するもので、系が大きくなると計算精度を落とさず、計算時間の短縮O(N2))に大きな効果がある。しかしながらdimer-es近似では4中心のクーロン積分を計算する必要があることから、大きな系ではボトルネックの一つになってしまう。そこで本稿では、クーロン積分の高速化に用いられる、連続多重極子展開法(continuous multipole method; CMM)をFMO法プログラムABINIT-MPXに実装し、計算精度と計算時間について考察を行った。