2011 年 82 巻 4 号 p. 371-381
飼料中の粗タンパク質(CP)および第一胃非分解性タンパク質(CPu)含量が60頭のホルスタイン種育成雌牛の発育および窒素出納に及ぼす影響について検討した.試験期間を90日齢から体重350kgまでとし,増体日量(DG)を1.0kgに設定して低CP (LP)区と高CP (HP)区を設けた.体重200kgまでは乾物中のCP (CPu)含量をLP区13.9%(4.8%),HP区は16.1%(6.5%)とし,体重200kg以降はLP区11.7%(3.7%),HP区14.0%(4.8%)とした.体重350kgに達した日齢は両区間に差はなく,発育および体尺値の増加日量にも差は認められなかった.両区の窒素蓄積量に差はなかったが,HP区で尿中窒素排泄量が増加した.尿中排泄アラントイン量から推定した微生物態タンパク質合成量は体重200kg時でHP区が高く(P < 0.05),代謝タンパク質供給量もHP区で高まった(P < 0.01).以上より,TDN含量が70%前後の飼料給与によるDG 1.0kgレベルの高増体を示す育成雌牛には,LP区のCPおよびCPu含量以上のタンパク質増給は発育および窒素蓄積量には影響せず,増給したCPuはほとんど尿中に排泄されて有効に利用されないことが示唆された.