2012 年 52 巻 6 号 p. 429-432
元来健常で頭痛や発熱を自覚したことはない78歳男性が,痙攣発作を生じた.頭部MRIで脳膿瘍をうたがわせる所見をみとめ,抗痙攣薬,抗菌剤およびステロイドを投与したところ痙攣は消失,意識清明となり,以後無症状で経過した.病変を穿刺吸引,培養しFusobacterium necrophorumを同定した.適切な抗菌薬の投与により膿瘍は消失した.Fusobacterium属は口腔内,上気道に常在するグラム陰性嫌気性桿菌であるが,まれに健常者にも脳膿瘍を形成することがあり,起因菌として認識する必要がある.