2012 年 45 巻 5 号 p. 530-536
症例は46歳の男性で,腹痛とふらつきを主訴に来院した.腹部は膨満し,下腹部に手拳大の腫瘤を触知した.腹部USおよび腹部CTで腹腔内に大量の液体貯留と腫瘤を認めた.腹水穿刺で血液を吸引したため腫瘤からの腹腔内出血と診断し,緊急手術を施行した.腫瘍は小腸間膜に存在し,表面から出血していた.また,腸間膜に多数の播種を認めた.腫瘍を含めて小腸を切除し,播種は電気メスで焼灼した.標本は12×10×6cmの充実性腫瘍で,割面は白色分葉状で一部に出血を認めた.免疫染色検査では腫瘍細胞はc-kit,CD34が陽性でα-smooth muscle actin(SMA),S-100は陰性であり,小腸のgastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.術後早期よりimatinib mesylate 400mg/日の内服を継続し,術後5年の現在,無再発生存中である.