日本臨床外科学会雑誌
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症例
特発性上腸間膜静脈血栓症のため短腸症候群となった1例
遠藤 悟史三島 修草薙 洋加納 宣康
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2012 年 73 巻 4 号 p. 997-1001

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抄録

症例は43歳,女性.突然発症の腹痛を主訴に当院へ救急搬送となった.理学所見では腹膜刺激症状を認め,造影CT検査で大量の腹水および上腸間膜静脈血栓ならびに広範囲の小腸壊死を疑われた.緊急で広範小腸切除術を行い,小腸断端は吻合せずにそのまま閉鎖した.また血栓除去術も行い,術後に抗凝固療法を開始した.遺残した血栓の消失を確認した後に小腸吻合術を行い,残存小腸10cmの短腸症候群となった.第149病日に経口摂取と夜間の間欠的中心静脈栄養療法併用のうえ,自宅退院となった.現在術後3年経過し無再発生存中であり,間歇的中心静脈栄養を用いて社会復帰を果たしている.自験例は血液凝固異常をきたす原因疾患が特定されず,特発性上腸間膜静脈血栓症と診断した.広範小腸壊死のため短腸症候群に陥ったが,社会復帰が可能であったため若干の文献的考察を加えて報告する.

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© 2012 日本臨床外科学会
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