2012 年 34 巻 5 号 p. 324-333
【目的】特定健康診査(メタボ健診)のデータから脳卒中の発症危険因子を検出し,脳卒中発症危険因子としてのメタボリックシンドローム(メタボ)を評価して有効な脳卒中予防対策を検討した.【対象と方法】秋田県で行われた2008年の非脳卒中メタボ健診受診者47969人と2007年から2010年までのメタボ健診受診者で受診から1年以内の脳卒中を発症した174人を対象とした.健診項目の性,年齢,血圧,肥満度(BMI),総コレステロール,糖尿病,メタボ,心房細動,および喫煙を独立変数とし,脳卒中発症を従属変数とした多変量logistic解析で脳卒中危険因子を病型別に検討した.【結果】脳梗塞では男性,年齢,血圧,糖尿病,心房細動,喫煙,脳出血では年齢,血圧,くも膜下出血では女性,喫煙がそれぞれ危険因子として検出された.メタボは脳卒中危険因子ではなかった.血圧と喫煙の人口寄与危険割合は大きく,集団の脳卒中予防には高血圧対策と禁煙対策が最も有効であることが示唆された.【結論】集団における脳卒中予防対策では血圧と喫煙の優先順位が高い.メタボは従来の脳卒中発症危険因子を凌駕する危険因子ではないので,脳卒中発症を予防するために,メタボ健診後の積極指導対象者を内臓肥満者に限定せず,喫煙者や高血圧者に拡大するなど,特定保健指導の運用の見直しが必要であると考えられた.