2009 年 53 巻 6 号 p. 379-384
本研究では,炭素鋼の正面フライス加工において,加工能率を維持したままバリの抑制を図る手法として,レーザを用いた被削材の部分的な改質による方法について提案した.実験では炭酸ガスレーザを用いて選択的に熱処理を行った炭素鋼JIS S45Cの正面フライス加工において,切削後の被削材端部の形状についてバリの高さの測定と断面の組織観察を行い,被削材へのレーザ熱処理によるバリの抑制効果について検討を行った.切削後における被削材の端部の形状はレーザ照射条件に依存し,表層にマルテンサイト組織が生成されていると微小なコバ欠けが生じる.またマルテンサイト組織が生成されていなくても,レーザ熱処理により硬度が母材よりも高くなっていると発生するバリの高さが小さくなる.最終切取り予定線へレーザ熱処理を行えば, それ以前の切削でバリが発生していても最終切削においてバリの発生を抑制することができる.仕上げ面粗さは,レーザ熱処理の影響をほとんど受けない.