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2025年度JaLCミニセミナー -DOIとDOI登録の基礎-

2025年9月9日にJaLCミニセミナー -DOIとDOI登録の基礎-を開催しました。
多くの皆さまにご参加いただき、誠にありがとうございました。
当日の資料や説明動画は以下よりご覧ください。

「DOIとJaLCの基礎」
講師:JaLC事務局


【内容】
永続識別子PIDとは
DOIとは
DOIを運用する組織
JaLCについて
JaLCの役割
FAQの紹介

「IRDBからのJaLC DOIの登録方法」
講師:国立情報学研究所 IRDB担当


【内容】
IRDBの概要
DOI登録の流れ
DOI登録時の注意事項





<「DOIとJaLCの基礎」Q&Aまとめ>

Q1. DOI 登録後にメタデータの更新は可能ですか?
A. はい。DOI 登録後でも、メタデータを更新できます。たとえば、以下のような場合が考えられます。
・ メタデータに誤字・脱字がみつかった
・ ORCID や資金提供者 ID などの識別子や、ライセンス情報を追加
・ システムの変更に伴いランディングページの URL が変更になった
DOI そのものは永続的であり、一度割り当てられると変更できませんが、それに関連付けられたメタデータは固定されていません。メタデータ更新後、外部機関(CiNii など)により OAI-PMH を使って更新分のメタデータが収集、更新されます。
※JaLC のメタデータを取り込んでいる情報サービスへの反映は、各サービスのタイミングで行われるため、反映には時間がかかることがあります。


Q2. JaLC 会員や準会員ではなくなった場合、アイテムにつけられた DOI は無効になりますか?URL(https://doi.org/...)からアクセスできなくなるのでしょうか。
A. JaLC の会員でなくなっても DOI は無効になりません。
一度登録された DOI は永続的な識別子であり、事情により保有・管理できなくなった場合であっても、DOI とランディングページの関係は維持され、https://doi.org/... で引き続きアクセスされます。
しかしこの場合、登録されたコンテンツおよび DOI とそのメタデータの維持・管理を他の JaLC 会員に引き継ぐ(移管する)ことが義務付けられています。
移管されないと、DOI の管理者が不在となるため、DOI のランディングページ URL を下記の「墓標ページ」に変更することになります。
※墓標ページ:https://japanlinkcenter.org/html/DOI_Not_Found.html
適切な移管先が見つからない場合は、JaLC サポートセンターまでご相談ください。


Q3. 本学では紀要論文をリポジトリに登録する際、著者に告知した上で論文に DOI を登録していますが、古い紀要論文については遡及して DOI を登録していません。一度 DOI を登録すると取り下げできませんが、検索の利便性やオープンアクセス化の現状を鑑みると、一律に DOI を登録することも検討していくべきでしょうか?
A. 古い研究成果であっても、現在も電子的に公開されており、他の論文等によって引用される可能性があるものは、DOI 登録をご検討ください。
DOI 登録により、メタデータが学術情報提供サービスに収集されることで、多くの検索サービス、引用管理ツール等で長期的にコンテンツが発見される可能性が高まる利点があります。
一方で、遡及的に全てのコンテンツに DOI を登録する場合、多大なりソースを費やすことや、リポジトリの方針等の記載内容(例:xx 年以降のコンテンツを DOI 登録など)との齟齬が生じる可能性もあり、場合によっては対象範囲を限定する等の対応も考えられます。
また、過去分を一度に大量に DOI 登録したい場合は、JaLC サポートセンターまでご相談ください。


Q4. 研究活動で撮影した写真 1 枚ごとに DOI を登録しても良いですか?
A. DOI は論文等に引用される際の最適な単位で登録することが望ましいです。
写真が 1 枚ごとに引用される可能性があるならば、1 枚ごとに DOI 登録することが望ましいです。
また、PDF と同様、コンテンツそのものに直接 DOI を登録するのではなく、そのコンテンツがどういったものなのかを説明するページ(ランディングページ)に対して DOI を登録することが推奨されています。1 コンテンツ毎にランディングページを作成することをご検討下さい。


Q5. デジタルアーカイブのコンテンツ(学術論文ではなく、所蔵している貴重書等)に DOI 登録する上での注意点を教えてください。
A. 論文や研究データと同様に、電子化された画像等をコンテンツとして、そのコンテンツを説明するランディングページに対して DOI 登録してください。
DOI 登録する単位(全冊 or 巻など)は、引用される単位であることが望ましいです。
また、ランディングページの管理、メタデータの質、権利情報、長期的な維持管理などへの注意が必要です。
(参考)国内外の DOI 活用事例
・ 「新日本古典籍総合データベースにおける古典籍画像への DOI 付与とその運用」国文学研究資料館(令和 3 年 12 月)
https://japanlinkcenter.org/top/doc/2112_t_slide_2.pdf
・ Archaeology Data Service(ADS)の DOI 活用事例
https://archaeologydataservice.ac.uk/help-guidance/data-reuse/digital-object-identifiers-doi/


Q6. JaLC に登録された抄録について、公開することに障壁があった事例や、公開したことによるポジティブなフィードバックなどはありますか?
A. 現時点で、JaLC に登録された抄録について、提供元である JaLC 会員やメタデータ提供先からのフィードバックはありません。
JaLC では、抄録を登録する際「抄録ライセンスフラグ」で利用範囲を指定する必要があり、メタデータとして抄録を入手する際はユーザー登録が必要な OAI-PMH を利用する必要があるなどの制約があるため、登録や利用が限定的な現状があります。


Q7. DOI 登録した論文内容に軽微な修正が生じた場合、DOI の取下げをせず論文 PDF のみ差替えするのは可能でしょうか?
A. 改変の程度によりますが、軽微な修正(誤字脱字の訂正など)の場合は、DOI は取下げず、ランディングページで論文 PDF を差し替えて、ランディングページに修正履歴を明記することが望ましいです。
軽微でない場合は別の版として別途公開するなど、最終的には著者や出版社にご判断いただくことになります。


Q8. JaLC では、学術雑誌論文の著者最終稿に DOI 登録することを推奨していますか?著者が希望しない場合には、著者最終稿に DOI を登録する必要はないのでしょうか。
A. JaLC としての推奨はありません。著者の所属機関や、投稿先の出版社ポリシー(エンバーゴ)などによりご判断ください。
なお、VOR(出版社版)とは別に DOI 登録する場合は、メタデータ項目にその関係性を入力することを推奨しています。
また、「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」において即時 OA の対象となっている論文は、ゴールド OA でない場合に、論文を機関リポジトリで公開してオープンアクセス化すること(グリーン OA)が推奨され、この際に DOI 等の識別子の報告が求められていることも考慮する必要があります。


Q9. ハーベストの翌日に JaLC DOI が有効化されていると認識していますが、まれに数日後になることがあります。それはどんな要因によるものなのでしょうか?
A. サービス停止を伴うシステムメンテナンス日、登録メタデータのなんらかの不都合が考えられます。
ちなみに、JaLC DOI は、1 日に4回、DOI 財団(DOI Foundation)のシステムに送信しています。そのため、JaLCシステムに登録した後、すぐには有効(DOI 名の前に"https://doi.org." を付けて飛び先のページに遷移できる状態)にはならず、次回の定時処理で有効になります。
また登録後に URL 等を変更した場合も上記のとおりすぐには有効になりません。
なお、Crossref DOI、DataCite DOI を登録される場合は、JaLC が代行登録しており、Crossref や DataCite にメタデータが登録されてから DOI 財団(DOI Foundation)のシステムに送信されるため、多少のタイムラグが生じます。
数日経っても DOI が有効にならない場合は、準会員の場合は取りまとめ正会員、または JaLC サポートセンターまでお問い合わせください。


Q10. コンテンツ種別が「ジャーナルアーティクル」の論文については、出版者名やページ数が入力されていない場合、ハーベストエラーが発生するため、現在は「none」を入力して対応しています。しかしこの方法ではメタデータが冗長になり、登録作業も煩雑になるため、必須項目を減らしていただけないでしょうか?
A. DOI 登録機関として、オンライン出版やデータ論文など、従来型の書誌情報が存在しない場合があることを認識しています。
一方で、JaLC で定義しているメタデータの必須項目は、メタデータの一貫性を保証し、学術コンテンツを特定するために必要な情報として設けられており、多くのサービス(メタデータ収集システム、索引付与システム、文献管理ツールなど)は、最低限の書誌情報に依存しています。必須項目に該当する書誌情報が存在しない場合も、メタデータの質を下げ、外部サービスで誤解を生む可能性があるため、"none" の入力は可能な限り避けることを推奨しております。
考えられる対応方法としては、出版者名には、例えば大学リポジトリや学会誌の場合、所属機関名や学会名が通常入力されています。
JaLC では、近年の多様な研究成果の公開手段を踏まえて、CiNii Research や Crossref 等、JaLC が連携する各サービスとも連携し、必須項目の見直しを含めたスキーマの改訂を検討していきます。


Q11.電子ジャーナルに掲載され出版社により DOI が登録されている論文に対して、同じ論文を機関リポジトリに登録すると、別の DOI で登録されることになります。これは問題ないのでしょうか?
A. はい、同一の論文内容であっても「異なるバージョン(版)」であれば、別の DOI を登録してリポジトリに登録することは問題ありません。
学術論文には、以下のようなバージョンがあります。
・ プレプリント(Preprint):査読前の原稿。自由に公開され、独自の DOI が登録されることもある。
・ 著者最終稿(Author Accepted Manuscript, AAM / Postprint):査読後に修正された原稿で、出版社版(VoR)とはレイアウトなどが異なる。
・ 出版社版(Version of Record, VoR):最終公開版。出版社により DOI が登録されている。

機関リポジトリに登録されるのは通常、「プレプリント」または「著者最終稿」です。
これらに DOI を付与することは、国際的にも許容されています。ただし、すでに存在する出版社版の DOI との関係性を、メタデータに明示することが重要です。
例えば、リポジトリのメタデータには以下のような項目を追加することが推奨されます:
・ relatedIdentifier(関連する DOI)
・ relationType(例:isVersionOf)
また、引用時には出版社版(VoR)の DOI を使用することが一般的に望ましいです。

※共著者が同一の論文内容をそれぞれ別に公開し、それぞれに DOI を付与した場合でも、メタデータにおいて両者が同一内容の論文であることを関連情報として記述することが可能です。
たとえば、JPCOAR スキーマの「20 関連情報」項目を用いて、関係性(isVersionOf、isIdenticalTo など)を明示することが推奨されます。
(参考)「JPCOAR スキーマガイドライン」 20 関連情報
https://schema.irdb.nii.ac.jp/ja/schema/2.0/20


Q12. 研究者における DOI の認知度を教えてください。DOI が登録されることに、研究者は、どの程度メリットを感じているのでしょうか?
A. JaLC ではこれまでに DOI の認知度調査を行っておらず、研究者が感じる DOI 登録のメリットについての情報はありません。

DOI 登録における研究者のメリットとして以下が考えられます。
[永続的で信頼できる引用]
DOI は、ジャーナルやリポジトリの URL が変更されても論文への永続的なリンクを提供します。研究者は、自分の成果論文に DOI を付与して公開することで、他の人が常に正しいバージョンにアクセスできることを保証できます。
[発見されやすさの向上]
DOI 登録された論文は主要な書誌データベースや引用情報サービスに取り込まれるため、論文が他の研究者に見つかりやすくなり、読まれたり引用されたりする可能性が高まります。
[明確な識別]
DOI は各論文の特定バージョンに対して一意に付与されるため、プレプリントや著者最終稿、出版版など複数のバージョンが存在しても各バージョンを特定することができます。
[プラットフォーム間での相互運用性]
DOI は著者名、論文タイトル、資金提供者などの豊富なメタデータと連携しており、researchmap や ORCIDのプロファイル、機関リポジトリなどに自動的に取り込まれる仕組みがあります。


Q13.本学では永続的な識別子として「ハンドル(Handle)」を使用しています。科研費の報告書などで DOI を記載するように求められる場合を除けば、DOI を登録する必要性をあまり感じません。ハンドルではなく DOI を登録するメリットには、どのようなものがありますか?
A. Handle と DOI はどちらも、リソースに永続的な識別子を付与し、システム変更などによる URL 変更にも対応できる仕組みです。いずれもリンク切れを防ぎ、研究成果の所在を安定して示すことができます。
DOI(Digital Object Identifier)は、Handle システムを基盤として設計され、構造化されたメタデータ(タイトル、著者、出版年など)を必ず登録する点が大きな特徴です。このメタデータは、JaLC や Crossref などの登録機関によって管理され、様々な学術サービスに流通・利活用されます。
一方、Handle は識別子とランディングページの紐づけのみを行う簡易な仕組みで、メタデータの登録は必須ではなく、外部との情報連携も限定的です。

DOI には以下のような利点があります。
・ 学術界での事実上の標準として、国際的に普及している(ISO 26324 に準拠)
・ 学術情報サービスにより自動的に収集・リンクされ、検索性と引用性が高い
・ 他システムとの相互運用性が高く、研究評価や成果報告でもスムーズに活用できる
したがって、DOI は単なるリンク手段としてだけでなく、学術的な発見性・影響力を高めるためのツールとしての価値があります。特に研究成果を広く共有し、評価につなげたい場合には、DOI 登録が強く推奨されます。


Q14. DOI suffix の効果的な決め方(suffix の振り方、決め方)があれば教えてください。 A. DOI の suffix(接尾辞)は、その前に付く prefix の下で一意(ユニーク)であれば、基本的に自由に設計できます。ただし、識別性・可読性・運用のしやすさを考慮し、以下のようなルールに基づく命名が推奨されます。
推奨される設計要素:
・ ジャーナルの略称または ISSN
・ 発行年
・ 論文 ID や eLocator、巻号情報などの論文を識別する番号
・ バージョン識別子(必要な場合)
例:10.XXXX/jpmed.2025.001-v1
注意点(技術・運用上の配慮):
・ URL として使用できる文字種(半角英数字、ハイフン、ピリオドなど)を使用し、スペースや記号(%, &, #,空白など)は避ける
・ 見た目が紛らわしい文字(例:マイナス記号、エンダッシュ)の使用を避ける
・ 技術的には大文字・小文字は区別されるが、運用上は小文字で統一する

※JaLC では、DOI 名(suffix)に使用できる文字に関する制限があります。
(参考)「DOI® HANDBOOK(日本語版)」3.2 DOI 名の構文
https://japanlinkcenter.org/doi-handbook-JP/HTML_JP/03namespace/namespace02.html