1.1 DOIシステムの歴史と目的
DOI®(Digital Object Identifier:デジタルオブジェクト識別子)システムは、出版業界の3つの事業者団体(国際出版連合 International Publishers Association、国際科学技術医学出版者協会 International Association of Scientific, Technical and Medical Publishers、米国出版者協会 Association of American Publishers)の共同作業から始まりました。活字から始まった出版がデジタルコンバージェンスとマルチメディア利用に向かう動向を踏まえ、デジタルネットワーク上でコンテンツの識別を管理する汎用性のある枠組み(フレームワーク)として構想されました。システムは1997年のフランクフルト・ブックフェアで発表され、同年には、DOIシステムを開発、管理するDOI財団が設立されました。
DOI財団は当初よりCorporation for National Research Initiatives(CNRI)と技術提携し、DOIシステムのデジタルネットワークコンポーネントとして、CNRIが開発したHandle®システム を使用してきました。CNRIは現在もDOI技術サポートサービスプロバイダーとしてDOI財団の技術パートナーです。
DOI財団は1998年からINDECSプロジェクト(1998年~2000年)と密接に協力し、そこから数々の取り組みが継続しています。INDECSフレームワークはDOIのデータモデルの基礎となっています。
DOIシステムは、組織がユーザーやユーザーのコミュニティにサービスを提供するためのアプリケーションの構築を可能にする技術的・社会的基盤を提供します。例えば、DOIシステムは様々な業界の内部プロセスや、企業の枠や国境を越えた出版・報道、およびセマンティックウェブアプリケーションの分野で使用されています。
DOIシステムが広く実装されるようになってきたため、DOI財団はISO規格として提案するよう要請を受けました。ISO 26324は2012年に発行され、2022年に更新されました。ISO規格はDOIの構文と運用を規定する一方で、実装に関しては規格の登録管理機関であるDOI財団に委ねられています。
なお、DOI構文は元々、米国情報標準化機構(ANSI/NISO)の規格であるANSI/NISO Z39.84-2010で2000年に初版が発行され、2017年に廃止されました。