1.6 登録機関がDOIシステム上に構築できる付加価値サービス

登録機関は、DOI解決サービスがサポートするマルチプルレゾリューションリクエストを使用し、様々な付加価値サービスを提供することができます。単一のウェブアドレス（URL）要素のみを返すシングルレゾリューションとは対照的に、マルチプルレゾリューションでは、DOIレコードで返すことが可能なあらゆる形式の有用な情報を利用することができます。マルチプルレゾリューションは、通常、複数のURLを取得するために使用されますが、他の様々なアプリケーションへ情報を提供するのに十分な柔軟性も備えています。

このセクションでは、こうした付加価値サービスの例をいくつか紹介します。

1.6.1 複数のインスタンスを持つ対象物の管理

対象物が複数のウェブリソースにリンクされている場合、例えば、ある論文にPDF版とHTML版の2つのウェブアドレス（URL）が提供されている場合、登録機関（RA）はリソース選択の仕組みを実装する必要があります。以下のような仕組みが考えられます。

手動選択
ユーザーがRAのアプリケーションから対象物のDOI名をリクエストすると、アプリケーションは選択肢のメニューを生成し、ユーザーはそこから手動で解決先を選択します。
自動選択
ユーザーに応じたパラメータ（例えば、IPアドレスを介して割り出されるユーザーの地理的位置）に基づく定義済みのルールに従って、ユーザーがリダイレクトされるURLを提供されたアドレスのリストの中から自動的に選択します。

メニューオプションまたはリダイレクトルールは、DOIレコードから取得されます。図6に示すように、特にリダイレクトルールは、DOI解決サービスによって解釈されるXMLコードを含むリダイレクトグラフ要素を通じて定義することができます。

1.6.2 メタデータが充実したウェブページの動的な構築

登録機関（RA）は、ユーザーからの対象物のリクエストに応じて、それぞれのDOI名に割り当てられたメタデータを表示するウェブページを動的に構築することができます。メタデータは、それぞれのDOI名を所管するRAのメタデータサービスによって提供されます。このメタデータサービスのアドレスは、DOIレコードから取得することができます。

図7は、建築構造物の各製品を、物理的な製品にQRコードの形式で印刷されたDOI名によって識別するアプリケーションを示しています。ユーザーがQRコードをスキャンすると製品のランディングページにリダイレクトされ、製品の最新情報に素早くアクセスできます。