DOI® HANDBOOK

2.2 DOIシステム参加者:登録機関と登録者

  1. DOIハンドブック
  2. 第2章 DOIシステムのガバナンスと参加
  3. 2.2 DOIシステム参加者:登録機関と登録者

登録機関(RA)(正式には登録機関会員と呼ばれます)は、DOIシステムのモジュールとして、特定の利用者にサービスを提供します。RAの新規加入はいつでもできるため、新しいユーザーコミュニティを追加し、それに応じたサービスを提供することでシステムのモジュール式に拡張できます。登録者とは、特定のDOI名の登録を申請し、その登録を受けた個人または組織です。

本セクションでは、DOIシステムにおける登録機関の役割と機能について、運営上および技術上の要件と方針を含めて説明します。現在の登録機関のリストとその管轄区域については、DOIウェブサイトをご覧ください。

2.2.1 登録機関の役割

登録機関(RA)は、1つまたは複数のユーザーコミュニティにサービスを提供します。コミュニティの定義は漠然としていますが、何らかの組織構造(公共、民間セクター、非営利、 規制機関など)の下で共通のアプリケーション分野や関心を共有する当事者の集団といえます。

RAがユーザーに提供するサービスには、次のようなものがあります。

RAの役割には、次のような活動なども含まれます。

2.2.2 登録機関のビジネスモデル

登録機関(RA)はDOI財団が定める方針と技術規格に準拠する必要がありますが、独自の事業運営モデルを自由に開発できます。「何にでも通用する万能のモデル」は存在しません。登録機関はあらゆる形態(営利組織、政府組織、非営利組織など)をとることができます。RAとなる可能性のある組織の機能の例には次のものがありますが、これらに限定されません。

DOI 登録を提供する費用はRAによって提供されるサービスに含まれ、個別に区別されない場合があります。想定されるビジネスモデルの例には、次のものがあります。

システムの運営経費は、登録者が直接的または間接的に負担します。個々のRAが採用するビジネスモデルは、DOI財団の方針に準拠している限り、RAが単独で判断すべき事項です。

注:RAは、DOI協定と方針に準拠している限りは制限なく、他のDOIシステム関連サービスを登録者へ提供することも選択できます。これらのサービスは、例えば、データ、コンテンツまたは権利管理における付加価値サービスの組み合わせを含めることができます。RAは自機関が収集したメタデータを活用するサービスを開発することもできます。

RAは通常、何千、何百万ものDOI名を登録し、多数の顧客とサービスを持つことでスケールメリットを達成します。アプリケーションの幅が狭いRAは単独の事業体として存続できない可能性がありますが、互いに協力しながら(例えば、バックオフィス業務を分担するなど)発展できる可能性もあります。適切なRAを特定できないコミュニティは、DOI財団に連絡し、DOIシステムをどのように使用するか、また新たなRAアプリケーションを開発すべきかどうかを相談する必要があります。

注:一旦DOI名が割り当てられると、誰でも無料でそのDOI名を解決することができます。解決時に少なくとも一部の情報が常に利用可能になります。

2.2.3 サービスの非独占性と競合に関する事項

特定の地理的領域や広範なアプリケーション分野(例えば、「音声」)のいずれかにまたがるDOI名登録権利の独占権は、通常はいかなる登録機関(RA)にも付与されません。例外もあり得ます。例えば、RAが既存の閉鎖的なコミュニティ向けのサービスとして運営することを義務づけられ、そのコミュニティ以外には登録サービスを提供しない場合などです。DOIアプリケーションは重複することが多く、デジタルの世界では何通りもの分類が可能であるため、独占契約は困難です。現在の唯一の例外は、欧州委員会出版局(Publications Office of the European Union)向けの実装であり、DOI登録と公式なEU文書の管理を含みます。

永続性のある識別子を維持するため、DOIアプリケーションは通常、引用リンクやメタデータ管理などの付加価値サービスを提供することによって単にDOIを登録するよりも多くの価値を提供します。RAは、これらの付加価値サービスとユニークセリングプロポジション(USP:ある商品のみが持つ独自の強みや魅力)を市場に提供しながら独立した事業体として運営します。DOIサービスにある程度の一貫性を持たせるため、RAになるための申請書は、予想される事業の影響に照らして評価されます。RAの市場やサービスに重複が予想される場合は、重複や競合の可能性をそれぞれのRAに知らせます。RAには、正当な事業利益を確保しながらDOIシステム全体の理解を促す形で問題に対処することが求められます。

2.2.4 登録機関協定

登録機関(RA)はDOI®財団と協定を結びます。この一般協定のコピーは、DOIのウェブサイトで入手できます(登録機関協定を参照)。

登録機関協定では、以下をはじめ多くの領域をカバーしています。

  1. RAへの権利の付与
    • DOI財団によってRAに割り当てられたDOIプレフィックス(複数あり)を用いてDOIシステムの一部としてDOI名を割り当てる権限を有するRAとしての地位
    • DOIの商標を使用する非独占的権利およびライセンス
    • DOIシステムのもとでRAとしての権利と義務を遂行するにあたって必要な実装技術(Handleシステム®など)の権利を行使するサブライセンス
  2. RAの義務:
    • 全てのDOI協定・方針順守を含め、DOI財団の全額支払い会員であり続けること。
    • 登録サービスと基盤を提供すること。
    • 品質保証手順を導入すること。
    • 他のRAの権利を尊重すること。
  3. DOI財団の義務:
    • DOIシステム、基盤、文書の維持管理。
    • RAに関する方針や料金の設定においてRAと協力すること。
    • ISOなどの規格制定団体に参加すること。
  4. 権利と知的財産:
    • DOI財団はRAを任命し、ISO 26324の登録管理機関となる独占的権利を保有する。
    • 商標はDOI財団の財産であり、RAに使用が許可される。
    • RAは、自身のサービスで特許権や他の所有権を主張できるが、DOIの特許・商標方針に準拠する必要がある。
    • DOI財団がISO26324の登録管理機関でなくなった場合は、継続性が確保されなければならない。
  5. 変更手続き、保証、補償、責任
  6. 解約手続き(下記を含む)
    • RAがDOI財団を退会する場合の検討事項(例えば、登録済みDOI名の後継者への移管など)
    • DOI財団が継続不能となった場合の検討事項(例えば、DOI財団の責務の後継者への秩序ある引き継ぎなど)

2.2.5 登録機関になるためのプロセス

登録機関(RA)になるためには、次の条件を満たす必要があります。

  1. DOI財団の一般会員になる
    RAアプリケーションの開発を視野に入れてDOI財団の一般会員になることに関心を寄せる組織は、DOI財団に連絡して予備的な話し合いをすることをお勧めします。詳しくは2.1.5 DOI財団の会員制度の詳細なメンバーシップ情報を参照してください。
  2. DOI財団理事会に申請し、RAに任命される。
    RAの任命はDOI財団の理事会の裁量で行われます。DOI名を登録するだけで、登録したDOIを活かした付加的サービスを提供しない申請が受理されたり、承認されたりする見込みはまずありません。申請を検討する場合、サービスや運営の実例として、現存する1つ以上のRAを確認することを強くお勧めします。2.2.2 登録機関のビジネスモデルを参照してください。
  3. DOI財団と登録機関協定を結ぶ。2.2.4 登録機関協定を参照してください。

2.2.6 登録機関の料金体系

DOIシステムは原価回収システムです。ISO評議会決議17/2012では「ISO 26324のための登録管理機関の運営にあたって、DOI財団によって原価回収の原則に基づき料金が課せられることを認める」とされています。共通のDOI基盤(全登録機関を代表してDOI財団により管理)にかかる費用は各登録機関に対する課金で賄われますが、登録機関は独自の商業モデルを採用して自身のサービスにDOI名登録を組み入れることができます。

2.2.7 登録者の役割と義務

登録者とは、DOIシステムを使ってエンティティを一意に識別することを望む個人または組織です。

登録者: