1.3 Handleシステムを用いた識別子/解決システム
前項で述べた解決サービスのために、DOI®システムはHandleシステム®を実装しています。Handleシステムは、インターネットなどネットワーク上で使用するための、効率的で拡張可能かつ安全なグローバルネームサービスを提供するために設計された汎用的な分散情報システムです。
1.3.1 DOI名:一意かつ永続的な識別子
DOI名は、エンティティ(対象物と呼ばれる)のグローバルに一意の識別子です。対象物は、デジタル、物理的、抽象的のいずれでもよく、登録機関(RA)の要件に応じて、エンティティを任意の粒度で定義することができます。DOI名により、小説の特定の版、小説の章、録音された短い曲などを識別することができます。
対象物は、発明、文学作品、芸術作品、アイデア、シンボル、名称、画像、デザインなどの知的財産である場合もあります。
図2に示すように、DOI名は、Handleシステムのサービスを通じて、DOIレコードと呼ばれる要素の集合に解決することができます。DOIレコードは通常、対象物のインスタンスを表すウェブアドレス(またはURL)を含み、電子メールなどのサービス、および対象物に関するデータの1つ以上の項目(メタデータ)を含むこともあります(図3)。

図3は、対象物が小説の特定の版である場合の例です。対象物は小説の章などでも構いません。

DOI名は時間が経過しても永続的です。この永続性は、識別子名が要素値、特にエンティティのローカライゼーションや所有権から独立していることによって実現します。これらの要素値は時間とともに変化する可能性がありますが、DOI名の解決を通じて、ユーザーは常に最新の要素値を取得できます(このためにはDOIレコードデータを定期的にメンテナンスする必要があります)。
注:DOIレコードの各要素には、明示的なタイプ(例えば、「URL」(ウェブアドレス)や「電子メール」)が割り当てられます。あらかじめ定義されたタイプがHandleシステムに存在し、新しいタイプをRAが追加することができるため、DOI解決システムは非常に柔軟で、新しい要件に対応することができます。
1.3.2 DOI名の構文
DOI構文は、Handleシステムのルールに従い、以下のとおりです。
<プレフィックス>/<サフィックス>
ここでは、
- プレフィックス:DOI名前空間を指します(名前空間は任意のサービスプロバイダーに割り当てられます)。
プレフィックスには数値と、名前空間割り当てで階層レベルを区切るために用いる「.」(ピリオド)のみを含めることができます。区切り文字「.」を1個含むプレフィックス(例えば「10.1000」)は、区切り文字を含まないプレフィックス(「10」)の下位に含まれることを表します。
Handleシステムでは、DOI®財団にプレフィックス「10」が割り当てられています。 - サフィックス:名前空間内の一意のローカル名。
サフィックスには、任意のUnicode2.0文字を使用できます(DOI名の長さに実質的な制限はありません)。この一意の文字列は、既存の識別子であっても、登録機関またはDOI名の登録者が選択した一意の文字列であっても構いません。
DOI名の例:10.1000/xyz-123、10.1109/5.771073など
注:DOI名はURLとして表すこともできます。1.5.1 DOIプロキシを用いたウェブリソースへの直接リダイレクト参照。
DOI名の構文について詳しくは、第3章 DOI名前空間を参照してください。