3.5 他の識別子スキームの統合
DOI名を、ISAN、ISBN、ISRC、ISSN、ISTC、ISNIをはじめとする、広く認められている他の識別子の代わりに使用することはできません。ただし、他の識別子スキーム/識別子と併用すると、DOIシステムの機能性が加わることでこれらのシステムから提供される識別機能が強化され、既存の識別子スキームとの相互運用性が実現します。
このセクションでは、他の識別子スキームを統合するさまざまな方法について説明します。識別子の相互運用性について詳しくは、DOIウェブサイトの識別子相互運用性ファクトシートを参照してください。
3.5.1 DOIメタデータにおける別の識別子の指定
対象物に別の識別子がすでに存在する場合は、それをDOIメタデータのカーネル宣言に入れます。
この要件により、当該対象物のカーネル宣言を使用して、DOIシステムサービスから構造化メタデータを取得する自動化プロセスで、既存のレガシースキームを利用できるようになります。
3.5.2 既存の識別子のDOI名への組み込み
既存の識別子スキームをDOI構文に含めることができます。
目的
DOI名に既定の識別子(例えば、ISBN、ISAN、ISWC、PII、など独自の識別子)を組み込むことによって、既存システムと統合することができます。DOI名の使用により、既存の抽象識別子、関連するマニフェスト識別子、その他のメタデータ、権利メタデータとの相互運用性が容易になり、各セクターの実用性に基づいて構築されます。
考慮すべき事項
構文規則により、別のスキームの既存の識別子をDOI名の一部として組み込むことが許可されている場合、そのような規則は ISO 26324の一部ではなく、登録機関によって別途文書化されます。このような場合には、下記の点に注意してください。
- 同一の対象物は、DOI名と組み込まれる識別子文字列の両方によって、それぞれの識別子スキームの中で独立したエンティティとして区別できる程度まで、表示されるものとします。
- DOIシステムの中でDOI名は曖昧な文字列です。DOI名に使われる特定の文字列から、他の識別子スキームに関する明確な情報を推測することはできません。また、他の識別子スキーム用に設計された非DOIアプリケーションでDOI名を使用できる保証はありません。
- 別スキームの既存の識別子の組み込みに関する具体的な構文ルールは、ISO 26324登録管理機関によって管理されるものとします。
実例
例1と例2は、ISBNとISSNをDOI名に組み込む場合を示しています。これとは別の統合構文も可能です。例3は、DOI名が他の識別子スキームの代わりにはならないことを示しています。
- 例1
10.978.86123/45678は、DOIのプレフィックスとサフィックスにISBN(978-86-123-4567-8)を組み込んだ場合を示しています。 - 例2
10.1038/issn.1476-4687は、ISSNを使用するDOIサフィックスを示しています。 - 例3
10.97812345/99990はDOI名です。これをISBNのPOS発注システムに送ったり、GS1バーコードに変換してISBNバーコードとして使用したりすることはできません。ISBN構文に適合していません。
ただし、いずれの識別子文字列も対象物は同じです。
3.5.3 別レジストリへのDOI名のリンク
DOI財団と関連レジストリの間の連携により、DOI構文に別の識別子スキームを組み込むことを容易にするビジネス関係を構築できます。そうした連携が合意できれば、新たな可能性が開けるかもしれません。ISBN-Aアプリケーションは、DOI名を既存のレジストリにリンクする一例です。詳細についてはDOIシステムとISBNシステムを参照してください。
3.5.4 他の識別子サービスの補完
DOIシステム機能は、他の識別子サービスの補完するために提供できます。例えば、様々なコンテキストにおける識別子の解決などです。識別子を使うサービスは、複数のプロバイダーによって提供される場合があります。識別子システムのルールによっては、特定の優先サービスプロバイダーのみを使用しなければならない場合があります。このような場合は、識別子の適用にあたって該当する登録管理機関のルールに従う必要があります。識別子スキームのそれぞれの登録管理機関は、各自のスキームやコミュニティの中での運用ルールを自主的に決定できます。DOI財団では、他の識別子スキームで使用するために合意済みの特定のメカニズムに関する最新情報を維持しています。